心肺蘇生人形のモデルは実在した子だった?
心肺蘇生の人形は、モデルがいます。この記事では、そんな心肺蘇生人形のモデルについて解説していきます。
心肺蘇生人形のモデルは?
心肺蘇生法の訓練で使用される人形は『アンちゃん』と呼ばれており、実在した『レサシアン』さんという人がモデルです。
レサシアンさんは、1880年代終わりにパリのセーヌ川にて遺体で発見された16歳と推定される少女でした。
彼女の遺体は暴行の痕跡がなかったため、自殺と考えられています。
セーヌ川から引き上げられた彼女の遺体は、他の遺体と共に公開展示されましたが彼女の身元は特定されませんでした。
そのため埋葬前には、彼女の顔の石膏型(デスマスク)が作成されました。
このデスマスクは、彼女の穏やかな佇まいが人々の心を惹きつけ、広まっていきます。
その後、似顔絵や仮面として複製され、ドイツやヨーロッパ中に広まりました。
心肺蘇生法の人形になった経緯は?
レサシアンさんが亡くなった数十年後のある日、2歳の子共が溺れるという事故が起こります。
この事故では、父親が子供を救出し気道から水を押し出すことに成功し、九死に一生を得ることとなりました。
しかし、もし気道から水をうまく押し出せていなければ呼吸ができず酸素が身体に回らない時間が増え、状況は全くといっていいほど違うものになっていたでしょう。
その事件をきっかけに、マウスtoマウスの人工呼吸法を実用的かつ効果的にトレーニングするため人形が必要だと考えられました。
このトレーニング人形に開発に携わったオスムンドレールダルさんは、人形をどのような顔にするか悩んでいたところ、壁にかかったレサシアンさんのデスマスクを目にしその顔を心肺蘇生法の訓練人形にすることを決め、その後現代まで広く使われることとなります。
1960年代以降、世界中で多くの人がアンちゃんで心肺蘇生法の訓練をし、その訓練のおかげで多くの人の命が救われています。
心肺蘇生法の手順
アンちゃんを使った心肺蘇生法のトレーニングは、いざという時に必ず役に立つトレーニングです。
ここからは、そんな心肺蘇生法の手順について解説していきます。
反応の確認
倒れている人を見つけたら、まず周囲の安全を確認し、安全なら近づいてください。
近づいたら、肩を軽く叩きながら大声で呼びかけます。
目を開けたり返答したりしない、意思のある行動がない場合、その人は反応なしです。
心肺停止後は、けいれんが見られることがありますが意思のある行動では無いため判断としては反応なしです。
また、心停止直後のけいれんやてんかん発作では、呼吸が正常かどうかを確認するため、けいれんが治まるのを待ちます。
注意喚起
対象者に反応がない場合、大声を出して『人が倒れています誰か来てください!』などといった言葉を発して注意を促します。
救急車とAEDの依頼
大声で呼びかけたのにも関わらず誰もいない場合、心肺蘇生法を始めるよりも先に救急車の手配と近くにあればAEDを持ってくることを優先してください。
他に人がいる場合は、1人に119番の通報を頼み、別の人にAEDを持ってくるよう依頼します。
乳児の場合、協力者がいない時は、観察を行い、必要に応じて2分間の心肺蘇生を行い、その後自分で119番に通報し、AEDを取りに行きます。
3分以内に戻れないのであればAEDは不要です。
呼吸の確認
心肺停止後は、呼吸も止まってしまいますが突然の心肺停止の場合は死戦期呼吸と呼ばれる途切れ途切れの呼吸がしばしば見られます。
そのため、反応のない対象者の呼吸確認はかなり重要です。
確認方法としては、胸部と腹部の動きを注視し確認していきます。
この時10秒以上時間をかけないよう注意が必要です。
普段の呼吸が無い、もしくは迷う場合次に説明する胸骨圧迫を開始します。
胸骨圧迫
呼吸を観察し心肺停止だと判断した場合、胸骨圧迫を行ってください。
重ねた手を組んで対象者の胸の真ん中あたりを5センチくらい沈み込むように強く圧迫していきます。
圧迫のテンポは1分間に100回のペースで30回行っていきます。
人工呼吸
胸骨圧迫を30回行ったら、気道確保後に人工呼吸を2回してください。
片手で対象者の額を抑え、顎の骨がある硬い部分を指に当てて顎を持ち上げ気道を確保していきます。
気道を確保したら2回空気を送り込んでいくために口で対象者の口を塞ぎ息を吹き込んでください。
この胸骨圧迫30回と2回のマウスtoマウスを繰り返し、救急隊の到着を待ちます。
ただ、救急隊が到着したとしても急に心肺蘇生法を中止するのではなく救急隊員の指示に従いその後の対処にあたるようにしましょう。
まとめ
心肺蘇生法に使われる人形には、悲しき過去がありました。
しかし、古くから現代まで命を救うためのトレーニング人形として広く知れ渡っており、人命救助に一役買っています。
アンちゃんのおかげでひとりでも命が助かることを期待しています。