医療器具の滅菌とは?どのような方法で行うの?
医療器具には、使い捨てのものや使用後に洗浄して再使用するものがあります。
再使用するものは使用後だと汚染されているため滅菌が必要です。
この記事では、そんな医療器具の滅菌について解説していきます。
滅菌とは
滅菌とは、有害であるか無害であるかに関わらず対象の器具に対して存在するすべての微生物を殺滅または除去することを指します。
手術や外来診療などで使用する器具には、使い捨てと再利用するものがありますが再使用するものは使用後にこの滅菌作業を行わなくてはなりません。
滅菌が必要な器具は?
滅菌が必要な器材は、手術用器具、注射器、穿刺器具、縫合器具、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具など器材です。
これらは、クリティカルな器材と呼ばれており無菌の組織や血管系に挿入する器材は滅菌が必要です。
また、傷口に当てるガーゼや絆創膏、パッド類も一部が滅菌処理されています。
滅菌の定義は?
滅菌の基準としては、多くの機関での協議を経て滅菌した100万個の滅菌物の中で菌が1つだけ確認できるレベルと定義されています。
これは、微生物の生存確率が100万分の1以下であれば滅菌が完了できているという意味です。
これを無菌性保証水準(SAL:sterility assurance level)と呼び、SAL≦10⁻⁶と表現されます。
滅菌業務のプロセス
滅菌業務は、どのような流れで行われるのでしょう。
ここでは、滅菌業務のプロセスについて解説していきます。
洗浄・消毒
使用後の手術器具は、滅菌業務を行う場所に運搬されて洗浄、消毒が行われます。
中でも真っ先に行われるのが洗浄であり、血液などの目に見えるすべての汚れを除去する作業です。
微生物のほとんどは、この作業で除去されます。
具体的な作業内容としては、洗浄ブラシを使って手作業にて洗ったり機械の中に入れて洗浄をしていきます。
この洗浄は滅菌前の重要な準備であり、適切に行うことで初発菌数を大幅に減少させることが可能です。
これにより、滅菌時間が短縮され、SAL≦10⁻⁶を達成する余裕が生まれます。
血液などの付着物があると滅菌剤が表面まで到達せず、完全な滅菌ができない可能性があるため、適切な洗浄は再生処理の中で最も不可欠なステップです。
検査・トレイ組み
洗浄・消毒された器材の機能性を確認するために、汚れが残っていないか、亀裂や切れ味の劣化がないかなどを検査します。
また、トレイ組みは手術や治療をスムーズに進めるために重要であり、必要な器材が全て揃っており、使いやすいように組み立てられることが求められます。
包装
器材を包装する場合、ラップ材やコンテナを使用して滅菌バッグや包装容器に収めます。
これにより、器材が再汚染されず、使用直前まで無菌状態を保つことが可能です。
包装が不適切だと、滅菌剤が内部まで到達せず無菌性が確保されず、微生物が再度器材に付着する恐れがあります。
包装の役割は、滅菌時に滅菌剤が内部に到達し、滅菌後に微生物が器材に侵入しないようにすることです。
滅菌
医療機関でよく使われる滅菌方法は、高圧蒸気滅菌です。
この方法では、包装された器材を高圧蒸気滅菌器に曝露することで滅菌が行われます。
滅菌の保証は、SAL(sterility assurance level)が10^-6以下であることを確認することになります。
高圧蒸気滅菌の場合、121℃の蒸気で15分、または134℃の蒸気で3分曝露することで、SAL≦10^-6を達成可能です。
滅菌が達成されたかどうかは、化学的インジケータ(CI)と呼ばれる紙片などを使用して確認します。
これらのCIは、滅菌条件が達成されると変色します。
また、器材の内部まで滅菌されているかどうかを確認することも重要です。
特に複雑な内腔構造を持つ器材では、空気を除去し蒸気を浸透させることが難しいため、専用の道具で内腔の滅菌を確認する必要があります。
保管
滅菌された器材は再汚染を避けるため、一定の条件下で保管されるのが一般的です。
また保管期間には、期限があり保管状況や包装材料、物品の劣化などによって変わります。
運搬
保管されている器具は、必要な時に保管場所から運ばれ再び手術などで使用されます。
使用された後は、また洗浄作業を行う場所に運搬されていきますが、使用された後の運搬は注意が必要です。
そのため洗浄場所と手術室は繋がっていたり、直通のエレベーターがあることが多いでしょう。
このようなプロセスを経て、医療機器の洗浄は行われていきます。
まとめ
滅菌作業は、医療の現場で欠かせない業務です。
しっかりとしたプロセスを経て、正しい滅菌作業を行っていきましょう。